国を守るか 命を取るか
突然ですが
日本の港に数千人の外国人が押し寄せ
自国では生きていけないから
日本に難民として受け入れて欲しい
と言われたら、どう思いますか?
数千人の外国人を受け入れるということは
大切にしてきた日本の伝統や文化は
多かれ少なかれもちろん薄れるでしょう
移民として受け入れた人たちが仕事を求め
少ない賃金で働くため
労働の最低賃金が下がるでしょう
将来的には人が増えすぎ、失業率が上がり
仕事のない人が増えるかも知れません
飢えて苦しんだ人が
万引きやスリなどの犯罪を犯し
犯罪のリスクが増えるかも知れません
その全てを踏まえた上で
それでもその人たちを受け入れるべきと
断言できるでしょうか・・・
これは今まさに、中南米と国境を共にする
アメリカ合衆国が抱えている問題です
この果てしなく続くフェンスは
アメリカとメキシコを隔てている国境の壁です
アメリカへに入国するメキシコの国境には
現在でも毎日数百〜数千人の人々が押し寄せ
移民・難民申請を待っています
歩けばわずか数分で変えられるこの国境は
一部の人には
何年も
場合によっては永遠に越えられない
壁となっているのです
その多くは
自国での暴力や貧困、重犯罪の被害などから逃げてきた
いわゆる移民キャラバンと
日本のメディアで呼ばれている人たちです
:写真はネットからの借り物です
アメリカを出てから1週間
メキシコの国境の街ティファナで
ボランティアをしてきました
わたしがさせてもらったボランティアは
難民の子どもたちと遊ぶこと
サンドウィッチなどの簡単なご飯を作って配ること
手書きの聞き取り書類をパソコンで打ち直し保管すること
というどれも簡単な仕事です
それでもスペイン語が全く話せなかったり
法律に関する聞き慣れない英単語がわからず
不自由はありました
簡単なことも時には満足にできず
なんの助けにもならなかったのが現状ですが
わたしにとっては今まで知らなかったことを自分自身の目で見て考える良い機会となりました
その中で知ることが出来たことを
少しだけ紹介したいと思います
ちなみに、全ての会話が英語で行われていたため
多少、事実と異なる点があるかも知れません
またボランティア中は写真禁止だったので、写真もありません
その点はご了承ください
下の写真の場所がティファナからアメリカへ渡る国境の検問所です
毎朝、このティファナの国境の検問所の少し北の辺りに
数百人〜多い時は数千人の人々が集まります
この人々は、検問所で整理番号のようなものをもらい
毎日、毎日自分たちが呼ばれる順番が来るのを待ちます
呼ばれる人数は定まっていないので
自分の名前が呼ばれるまで、毎朝国境に行き
自分の順番を待つのです
運がいい人は、あまり待たずに順番が来ます
何週間も何ヶ月も自分の順番を待ち続ける人もいるそうです
登録は6時半から始まります
多くの人は、難民キャンプで生活していますが
難民キャンプから国境までは遠く、もちろん歩いて向かうため
朝3時半〜4時、まだ辺りが暗い中
国境へ向かい、そこで何時間も待つことになります
冬の時期のティファナは寒く
薄めのダウンを着ていても肌寒さを感じます
集まっている人の多くの人はトレーナーやセーター、ニット帽などで待っています
(集まっている人全員が難民なわけではないので、一部の人は裕福な服装をしています)
ほとんどの人たちが小さな子どもを連れた家族です
また、難民キャンプもかなり収容の限界を迎えているので
中にはキャンプにも入れず、今日どこで過ごせばいいかもわからない
苦しい生活を強いられている人たちもいます
そういった現状に苦しむ人達が
川原などでホームレスとしてたくさん生活しています
名前が呼ばれてアメリカ側に渡る人たちは
残された他の人たちに手を振り
エールを送られ
自分が持っているものを預け
時には泣きながらハグをして
その様子を見ているだけでも胸にこみ上げてくるものがあります
しかし、名前を呼ばれアメリカ側に行けば
そこで入国が認められるわけではありません
アメリカでは通称ICEと呼ばれる移民税関捜査局に拘留されます
:写真はネットからの借り物です
ICEはコンクリートの窓のない建物で
内部温度を5度くらいの凍える環境に意図的にしているそうです
歯を磨くことも、シャワーを浴びることもできない
凍えるような環境だそうです
(これがアイスと通称される理由です)
アメリカ側に渡った難民たちは
ICEで移民の司法手続きを求める裁判が始まるまで待つことになります
裁判が始まるとまた1度ティファナに返され
そこで次の判決を待つそうです
ティファナに戻れば
また住む場所もなく仕事もなく
明日の身の保証もない不安な生活が始まります
:写真はネットからの借り物です
アメリカに入国することを許可される人々もいれば
最終的に許可されない人々もいます
なぜ、こんなにも大変な思いをしてアメリカへ移ろうとするのでしょうか
中米からの難民は、何千キロという道のりを何週間も砂漠の中を歩き
命懸けでこの国境に辿り着いています
なぜ、こんなにも危ない橋を渡るのでしょうか
自国では命の危険があり、安心に生きていけないからです
エルサルバドルやホンジュラス・グアテマラなど多くの中米の国は、情勢が不安定で
犯罪組織や反政府勢力などの強盗・誘拐・人身売買・殺人などが横行しています
実際に、ボランティア団体に相談に来た人の多くは
重犯罪の被害から命からがら逃げてきた人たちや
身内を犯罪組織や反政府勢力に殺されてしまった人たちでした
もう一度、自分の国に帰るということは、命を落とすということ
まさに命懸けの挑戦なのです
その切実な思いが、寒い中でも、暗い時間からでも
何時間でも何日でも待ち続ける原動力になっているんだと思います
受け入れないということは
消えていく命を見過ごすということ
わたしはアメリカ合衆国の市民ではないので
あくまでノーサイドですが
日本で将来、同じような議論が行われることがあれば
迷わず命を選べる人間でありたいと感じました
People should be treated like people.
ボランティアの方がオリエンテーションで言っていた言葉です
生まれた国や肌の色、言語に関わらず
誰もが幸せに過ごせる日が来るのでしょうか
全ての人に優しい世界がいつか実現されるといいですよね